【2023年最新版】医療広告ガイドラインについて解説します
2023年2月、厚生労働省によって「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(第2版)」が作成され、広告規制に関して注意喚起が強化され始めています。
そこで今回は、医療広告ガイドラインの概要やポイント、禁止されている広告表現について解説します。ホームページやチラシなどの広告を行う際にぜひ参考にしてみてください。
医療広告ガイドラインとは?
医療広告ガイドラインとは、医療機関における広告規制の指針を定めたものです。
ガイドラインの中では「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」と定義されています。
従来より、医療広告は医療法(昭和23年に公布)で制限されていました。一方でホームページに関しては自主的な取り組みしかなされておらず、明確な規制が無かったのです。
そんな中、美容医療(美容整形関連)のホームページに関する広告のトラブルが多発したことで医療広告ガイドラインが見直されました。他の広告媒体と同じように、ホームページに関しても誇大広告や虚偽広告などを禁止し、罰則・是正対象とされるようになったのです。
医療広告ガイドラインのポイント
医療広告ガイドラインにおける広告は「正確性」と「客観性」が求められます。
患者さんや地域住民の方々が広告内容を適切に理解し、適切な治療などが選択できるような内容にしなければなりません。
広告可能な内容としては、客観的な評価が可能であり、かつ事後の検証が可能な内容に限定されます。
医療広告ガイドラインで規制対象となる媒体は?
規制対象となる広告媒体は以下の通りです。(以下「医療広告ガイドライン」より抜粋)
- チラシ、パンフレット、その他これらに類似する物によるもの(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)
- ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオンサイン、アドバルーンその他これらに類似する物によるもの
- 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備による放送を含む。)、映写又は電光によるもの
- 情報処理の用に供する機器によるもの(Eメール、インターネット上の広告等)
- 不特定多数の者への説明会、相談会、キャッチセールス等において使用するスライド、ビデオ又は口頭で行われる演述によるもの
万が一、費用をかけずに広告していなかったとしても、上記は全て規制対象です。ご注意ください。
引用:
厚生労働省 「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針
(医療広告ガイドライン)」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000209841.pdf
医療広告ガイドラインで禁止される広告の種類は?
禁止される広告の種類は以下の通りです。
- 比較優良広告
- 誇大広告
- 公序良俗に反する内容の広告
- 患者その他の者の主観または伝聞に基づく、治療等の内容または効果に関する体験談の広告
- 治療等の内容または効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前または後の写真等の広告
次項より、主に禁止となる具体例を挙げて解説していきます。
比較優良広告
たとえば以下の表現が比較優良広告としてみなされます。
- 〇〇県で〜の治療をしているAクリニックやBクリニックより安く治療できます。
- 当院の医師は〇〇県内でもトップの治療実績があります。
- 当院は、〇〇地方の医療機関と比較して、〜手術の成功率が高いです。
- 2023年〇月〇日、野球選手の〇〇様に患者第一号になっていただきました。
特定または不特定のいかんにかかわらず、他の医療機関と自院を比較して、自院が優良である旨の記載は認められません。
また患者さんが、他の医療機関より優れていると誤認する可能性があるとして、著名人との関連性を強調することは禁じられています。
誇大広告
たとえば以下の表現が誇大広告としてみなされます。
- 当院のサイトは、厚生労働省が定めた医療広告ガイドラインの遵守状況を確認する審査制度に基づき、指定審査機関から認定証を取得したことを報告いたします。
- 〇〇インプラントセンター
- 全身脱毛2年間し放題
- 不安やストレスを感じている方は、がんのリスクが高まります。
医療広告規制を遵守している旨について、制度として行政機関が認証を付与していると誤認させてはいけません。
「〇〇インプラントセンター」のように医療機関の名称としてセンターを記載してはなりません。ただし「医療機関が提供する医療の一部を担当する部門名として患者・院内
向けに掲示しているもの」であれば誇大広告には該当しません。(例:休日夜間急患センター、救命救急センターなど)
脱毛は、毛周期(体毛が生え変わるサイクル)の関係で回数が限られます。そのため「し放題」という表現は誤認を与える可能性があり、規制対象です。
科学的根拠が乏しい情報(不安やストレスは、がんのリスクを高める)で特定の症状に関するリスクを強調し、医療機関への受診を誘導してはなりません。
虚偽広告
たとえば以下の表現が誇大広告としてみなされます。
- 当院の治療はあらゆる症例に対応し、安心・安全です。
- 当院には手術実績豊富な医師が多数在籍しているため、難症例でも必ず成功します。
- ◯◯治療、1日で全て治療が完了します。
- 医療脱毛 患者様満足度100%
医学上、絶対安全・かつ安心な手術などはあり得ないため、虚偽広告とみなされます。
また治療後の定期的なメンテンナンスが必要であるにもかかわらず、全ての治療が1日で完結することを表現してはなりません。
また、データの根拠を明確にしないまま患者満足度などを数値で表現することも禁止されています。
省令禁止事項
たとえば以下の事項が省令禁止事項としてみなされます。
- 口コミに治療内容や効果に関する体験談が掲載されている
- 口コミが医療機関のスタッフによる記載になっている
- ビフォーアフター写真のみが掲載され、費用や治療期間、リスクや副作用などが記載されていない
- 複数のビフォーアフター写真に対して、まとめて説明している(個別で説明していない)
「〇〇の手術を受け、痛みやストレスがなく手術が受けられました」のように治療内容や効果に関する体験談を記載した口コミは掲載できません。また患者さんではなく、医療機関のスタッフ自身の体験談であっても同様です。
ビフォーアフター(術前・術後)写真を掲載する際は、費用や治療期間、リスクや副作用などを記載しなければなりません。
医療広告ガイドラインで違反が見つかったらどうなる?
厚生労働省では「医療機関ネットパトロール」と呼ばれる委託事業で監視体制を強化しています。違反の疑いがある場合、評価委員会から医療機関に対して通知がきます。
万が一、通知がきた場合は、適切に修正対応してください。通知から1ヶ月後に評価委員会が再度チェックを行い、改善状況の確認を行います。その際に、改善されていれば問題ありません。
一方で改善がされていない場合は、評価委員会から自治体へ報告され、是正命令がなされます。従わない場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課される可能性があります。
まとめ
今回は、医療広告ガイドラインの概要やポイント、禁止されている広告表現について解説します。医療広告ガイドラインで規制対象となる内容は以下の通りです。
- 比較優良広告
- 誇大広告
- 虚偽広告
- 省令禁止事項
医療広告ガイドラインに反し、是正命令に従わない場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課される可能性があります。患者さんや地域住民の方々が広告内容を適切に理解し、適切な治療などが選択できるように、医療広告ガイドラインを遵守しましょう。