高いけどやっぱり気になる…口腔内スキャナーのメリット
口腔内スキャナー(CAD/CAM)で光学印象採得による歯牙の状態の再現性が高まり、適合の良い補綴物ができます。とはいえ、設備を導入するだけで相当な出費を覚悟しないといけませんので、導入に慎重になる歯科医の皆さんも多いのではないでしょうか。
自費診療がメインの医院と、保険診療メインの医院、それぞれ半々くらいの医院の3種類があるので、特性に合った機材を導入していることと思います。最近はサブスクリプションでの高額機器利用のサービスも始まってはいますが、基本的には歯科医療に使う機材をリースする医院はまだ少ないので、導入に当たっては慎重にメリット、デメリットを見極めるのも無理はありません。
CAD/CAMのデメリット
初期投資額は機種によって異なりますが、数百万円から、フルスペックで採り入れると1千万円と高額です。現在はCAD/CAMは保険診療が認められていないので、自由診療を選ばない患者が多い医院では現実的ではないかもしれません。また、自由診療を選ぶ患者が多い場合でも、減価償却のラインをどこに設定するかで、導入を迷ってしまいがちです。
初期投資額の大きさだけでなく、治療の際のデメリットがあるという歯科医師の方も多いかと思います。
深すぎるマージンの場合、マージンの状態をカメラが捉えることができず、圧排糸を使って従来通りのアルジネート印象採得を行うことになります。また、歯肉の状態が不安定でコントロール不良の場合も、再現性を保てないので使えないことがあります。スキャンできない場合はエラー表示が出るため、アルジネート印象採得に切り替える必要が出てきてしまいます。
CAD/CAMだとわずか1分で…
しかし、CAD/CAMは気になる存在です。
CAD/CAMがアルジネートの印象採得よりも圧倒的に優れている点は、患者の口腔内での違和感が軽減されることです。印象トレーを試適するだけで嘔吐反射が起こる強い反射の患者でも、ユニットの角度を調整して自在に操作できるので嘔吐反射が起きにくくなります。
また、アルジネート印象は温度管理の都合上、冷たいものを口腔内に入れるので、多くの患者が不快感を覚えます。一方、CAD/CAMは室温で使えるので、患者に不快感を与えずに済みます。ほかにも、口腔内でアルジネートが固化するのに約3分間かかるのに対し、CAD/CAMを動かす時間はわずか1分。患者が口を開けている時間が短くて済みます。
治療計画にも役立つCAD/CAM
さらにメリットとして挙げられるのが、使える場面が印象採得だけではない、ということです。
セット後の咬合状態を確認する際にも役立ちます。補綴物をセットしてCAD/CAMで一度なぞっておけば、セット後の口腔内の状態をパソコン上で表示できます。患者に目で確認してもらい、次にどのような治療ができるのか、治療計画を可視化することにも有効です。
ここ数年で、トリオスなど「う蝕検知機能」が付いた口腔内スキャナーも誕生しています。ハンディタイプの口腔内スキャナーで、有線でもコードレスでも使用できる2WAYタイプで非常に使いやすくなっています。現在、トリオス5シリーズが発売され、余計な印象部分を画面上でカットできる機能もついています。しかし、2022年12月の時点では、トリオス5シリーズは日本国内では購入できないようです。
新たな器具にはメリットとデメリットがつきまといますが、患者にとってより良い治療のためには、デジタルの力を借りることは避けられなくなっているとも言えそうです。