【2024年4月スタート】医師の働き方改革とは?

【2024年4月スタート】医師の働き方改革とは?

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2024年4月より開始予定の「医師の働き方改革」。
医師の働き方改革とは、長時間労働になりがちな医師の健康維持やワークライフバランスの確保を目的とした制度のことです。しかし「医師の働き方改革ってどんな改革?」このように思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は医師の働き方改革について解説します。
本改革の内容について理解を深め、スムーズに制度がスタートできるよう、今のうちから準備しておきましょう。

医師の働き方改革とは?

医師の働き方改革とは、医師の健康状態の確保と長時間労働の是正を目的として行う法改正のことです。良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保のためにも、法改正を行う必要があるとされています。

働き方改革については、既に一般企業においては2018年7月に交付され、2019年4月より施行。長時間労働の是正がなされてきました。

一方で医師の働き方改革に関しては、仕事の特殊性が考慮され、5年間の執行猶予が設けられていたのです。上記の変遷を経て、2024年4月に医師の働き方改革は施行されます。

なぜ医師の働き方改革が必要なのか?

医師の働き方改革の必要性が叫ばれている理由。それは、深刻な医師不足の問題が関係しています。少子高齢化に伴い、医療や介護のニーズは年々増加傾向にあります。2025年には団塊の世代が75歳を迎え、医療全般に関するニーズはさらに増加していくでしょう。

一方で、医師の長時間労働により、医師不足が深刻化してきました。地域によって医師の数もばらつきが生じるようになっています。

厚生労働省が出した「医師の働き方改革(令和3年度)」の「地域医療確保暫定特例水準を超える働き方の医師がいる病院の割合」には次の内容が記載されています。

許可病床400床以上の病院 :71%
大学病院        :88%
救命救急機能を有する病院:84%

                引用:厚生労働省「医師の働き方改革(令和3年度)

上記は時間外労働が年1860時間を超えると推定される医師がいる病院の割合を示しています(平成28年に調査実施)。上記の医療機関では、時間外労働を行っている医師が7割〜8割存在しているのです。

このような状況を打開するべく厚生労働省は「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」を2021年5月28日に公布。
そして2024年4月1日にいよいよ施行されるのです。

医師の働き方改革改正のポイントとは?

医師の働き方改革の内容について解説します。
改正のポイントは大きく分けて3つです。いずれも医師の健康状態の確保と長時間労働の是正を目的として策定された内容です。それぞれ詳しく解説します。

医師の働き方改革改正のポイント①|時間外労働の上限について

労働基準法では36協定により、時間外労働ができるのは原則45時間。年間では360時間と規定されていましたが、医師の場合はこれが適用外になっていました。

一方で2024年4月以降は、上記規定が医師にも適用されます。
また特別条項付きの36協定を締結した場合に限り、月100時間・年間960時間を上限として労働が許可されます。

しかし全医療機関に対し、上記の規定を設けてしまった場合、患者さんに対する医療の供給体制が崩れてしまう可能性があるでしょう。そこで、特定の条件を満たす機関(特定労務管理対象機関)であれば、上限が年間1860時間(月100時間未満)になる制度があります。条件を満たすにあたって前提となるのは、都道府県に「医師労働時間短縮計画」を提出することです。

医師の働き方改革改正のポイント②|追加的健康確保措置について

追加的健康確保措置とは、月の上限を超えて労働する医師に対して行われる措置です。
医療機関が面接を行い、当直回数の短縮や労働時間の短縮などの措置を行うものです。

具体的な措置内容は主に以下の通りです。

休息時間(インターバル)を9時間確保する
代償休息を与える(休息中に労働した時間分、休息にあてる)
連続勤務時間を28時間までに制限する

正当な理由なく本措置を行わない場合、都道府県知事から指摘が入り、指導される可能性があります。

医師の働き方改革改正のポイント③|医療機関勤務環境評価センターの設置について

医療機関勤務環境評価センターとは、医療機関で労働する医師の労働時間短縮のための取り組み等を評価するための機関です。都道府県が特定労務管理対象機関を指定する際に、本センターの評価を加味することとしています。

医師の働き方改革における時間外労働の上限規制に違反した場合どうなる?

医師の働き方改革の改正後に、時間外労働の上限規制に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(労働基準法141条)。
上記は、一般企業と同様の罰則になります。

医師の働き方改革における課題とは?

医師の働き方改革によって、医師の働き方は改善され、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制が築かれるでしょう。一方で、本改革にあたり、医療従事者全員で取り組むべき課題があります。それぞれ詳しく解説します。

医師の働き方改革における課題①|応招義務との調整

応招義務とは、医師が診察診療を拒んではいけないとする考え方のことです。
医師法19条1項では「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と定められています。

これを受けて厚生労働省は「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」で、以下の内容を記載しています。

「勤務医が、医療機関の使用者から労使協定・労働契約の範囲を超えた診療指示等を受けた場合に、結果として労働基準法等に違反することとなることを理由に医療機関に対して診療
等の労務提供を拒否したとしても、医師法第 19 条第1項及び歯科医師法第 19条第1項に規定する応招義務違反にはあたらない。」

引用:厚生労働省「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について

上記は「労働基準法に違反する場合、診察診療を拒んでも応召義務違反にはならない」ということを指しています。医師は、応召義務違反にならないよう、労働時間遵守に努めなければなりません。

医師の働き方改革における課題②|適切な分業体制を作る

医師の長時間労働の要因は、医師不足だけなく、業務過多が原因で負担がかかりやすいことが挙げられます。そのため、医療機関内で分業体制を作ることが重要です。医師が行っているタスクを整理し、医師でなくても対応できる業務を、コメディカルスタッフがカバーすることが必要になります。

医師の働き方改革における課題③|労働時間の管理体制を作る

医療機関側で、医師の労働時間を適切に把握・管理するための仕組み作りを行う必要があります。そのために、勤怠管理システムを活用することが有効です。現在はタイムカードだけでなく、ICカードやスマホ等と連携するシステム等もあります。医療機関に最適なシステムを導入し、労働時間を着実に管理できる体制を築いていく必要があるでしょう。

医師の働き方改革における課題④|女性医師の働き方をサポートする

女性医師は、出産や育児等のライフイベントが発生します。これらを理由に女性医師が職場を離れても、再び職場復帰できる環境を作る必要があります。
また女性医師がキャリアアップを図れるようキャリアサポートする環境作りも大切です。

医師の働き方改革までに管理体制・分業体制を作る

2024年4月より開始予定の医師の働き方改革までに、医療機関における分業体制や労働時間の管理体制を作っておきましょう。医師やコメディカルスタッフ含め、業務内容を整理し、バランス良く分業体制を作る必要があります。その上で労働時間の管理を徹底していきましょう。

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