面倒だけど経営に役立つ「か強診」のメリットとデメリットを深堀りする
先生の歯科医院でカルテ番号が小さい患者の年齢は何歳の方でしょうか? カルテ番号が小さい患者がもう何年も通院している場合、かかりつけ医としてある程度の意思疎通ができ、その患者の治療の好みや、使っている歯ブラシなどの自宅での口腔習慣を把握できていると思います。
目の前の治療だけでなく大きな視点を
歯科医師が歳を重ねれば、患者も高齢になっていきます。外来のみの診療を行っている歯科医院の場合、患者が認知症になった、施設に入った、寝たきりになって外出が困難になったなど来院困難になったケースがあると思います。その場合、訪問診療を行っている知人の歯科医にお願いして、これまでの治療歴を引き継いで、スムーズに在宅医療につなげていくことが必要になってきます。
食が細くなって、嚥下が困難になっているなら、何度も義歯調整するより、管理栄養士や理学療法士、作業療法士と協力して栄養サポートや嚥下訓練をしたほうがいいかもしれません。目の前の治療だけでなく、大きな視点を持つことが重要になってきていると言えます。
対応力を診療報酬で報いる制度
国が進める地域医療連携において、歯科医院も重要な役目を果たしています。
地域医療連携というと、高齢者を思い浮かべがちですが、子どもの学校歯科検診、口腔内に副作用が生じる服薬管理を行う薬局、口腔がんなど医科との連携が必要な患者、といった具合に幅広い内容があります。各歯科医が様々な世代や領域に対応できる「対応力」を養うことが求められている、ということなのかもしれません。
その対応力に対して、国が診療報酬で報いるという仕組みが「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」です。
負担増を上回る「安心感」
「か強診」の施設基準には、歯科医療従事者が適切な講習を受けていること、過去の一定の算定履歴があること、AEDなどの急変対応ができる設備を備えていること、近隣の歯科訪問診療と連携できるシステムになっていること、学校歯科医になっていることなど様々な要件書かれています。
これらの要件を満たそうとすると、一定のコストと時間、手間がかかります。
さらに、歯科医師会の会合や学会に参加しないといけない機会も増えるし、スタッフへの教育もしないといけない……。歯科医師の負担は少なくありません。
国は「か強診」を備えた医師に対し、診療報酬でこたえる考えです。毎年のように手厚くなっています。
エナメル質初期う蝕管理加算(260点)、歯周病安定期治療(120点)の加算ができるのは「か強診」のみ。現状では訪問診療メインの歯科医院が優遇される傾向はありますが、地域包括ケアの観点から、将来的には外来のみの歯科医院でも「か強診」の重要性が増していくことになりそうです。診療報酬優遇は続いていくとみるのが一般的です。
さらに、「か強診」を取った医師に話を聞くと、「患者に選んでもらえる歯科医院」になりやすいことを上げる医師が多いようです。一生口腔内を診療してもらえるのは、患者にとって大きな安心感につながるということが理由です。
歯科医院に求められる治療は時代とともに目まぐるしく変わっていきます。
しかし、かかりつけ医として若年から老年まで一貫して口腔に携わり続ける必要性は、時を超えても変わらないでしょう。